こんにちは。
占星術家の竹内俊二です。
「ねこでもわかるトランジット」シリーズの途中ですが、今日は複合アスペクトについて書きます。例としてはグランドトラインだけ解説をしました。
複合アスペクトとは
アスペクトとは、2つの天体の結びつきです。それが複数連合してセットになったものが、複合アスペクト(グループアスペクト)です。ホロスコープには三角形や長方形などのきれいな図形が現れます。
例えば、以下のようなものがあります。
グランドトライン
イギリスの推理作家 アガサ・クリスティー
カイト
元プロ野球選手 新庄剛志さん
グランドクロス
声優 山寺宏一さん
ミスティックレクタングル
自動車会社フォード・モーターの創設者 ヘンリー・フォード
YOD(ヨッド・ヨード)
フランスの作家、操縦士 サン=テグジュペリ
複合アスペクトとは、このような配置です。他にもいろんな種類があります。
講座でもTwitterなどでも、複合アスペクトに関するご質問をしばしばいただきます。それらをどう解釈したらよいのかを説明します。
複合アスペクトを読む前に
複合アスペクトを構成する要素
僕が複合アスペクトを構成する要素として考えているのは、基本的に「10天体のみ」です。以下のようなその他の感受点に関しては、基本的に構成要素とはみなしていません。
- ASC、MC
- ドラゴンヘッド、ドラゴンテイル
- キロン、四大小惑星、地球外縁天体
- バーテックス、アンチバーテックス
- リリス、パートオブフォーチュンなど
ただし、1度未満の正確なアスペクトを作っている場合などは、例外的に解釈に取り入れたこともあります。
複合アスペクトは、人為的に作り出そうと思えば全員できます。様々なマイナー感受点や小惑星を全て表示し、それらをアスペクトの線で結べば必ず何らかの複合アスペクトが浮かび上がります。しかし、それを見つけたとしても、10天体を越える際立った意味が生まれるわけではありません。逆に混乱するだけです。
これは極端な例ですが、ホロスコープには非表示になっているだけで実は存在している感受点が無数にあります。小惑星は名前のついているものだけでも2万個くらいあります。
基本は影響力の強い10天体の組み合わせで見るようにしましょう。
複合アスペクトとオーブ
オーブ(アスペクトが成立するとみなす許容度)をどんどん広げれば、複合アスペクトができる可能性が上がります。しかし、それはあまり意味がありません。見た目に複合アスペクトの形ができたとしても、誤差がゆるゆるならば実際の行動や現象に結びつきにくいからです。
オーブは通常通りです。複合アスペクトを作り出すためにオーブを変えるのは不自然です。
ただし「通常通り」と言っても人それぞれ意見が違いますが、僕は今は以下のような基準に設定しています。松村潔先生の『完全マスター西洋占星術』という本に記載されているオーブです。
0度:6度(太陽と月は8度)
180度:6度(太陽と月は8度)
120度:6度(太陽と月は8度)
90度:4度(太陽と月は6度)
60度:4度(太陽と月は6度)
150度:3度
複合アスペクトの話とは関係ないですが、「オーブ8度は相当広いな」と思いつつ見ています。ギリギリ8度で結びついているアスペクトも、実際に影響が現れている例をしばしば見かけるからです。
アスペクトの影響はグラデーション的で、誤差が0度に近いほど強くなり、広がるほどゆるくなります。そのニュアンスを解釈に反映させるには、何度の誤差でアスペクトが成立しているのか、数値でチェックする必要があります。僕はそれが習慣になっているので、ホロスコープソフト「ケプラー」の表示も、そのようにカスタマイズしています。
有名なホロスコープ作成サイト「Astrodienst」の初期設定では、オーブがかなり広く設定されています。オーブが最大10度くらいなので、複合アスペクトが出現しやすいです。
複合アスペクトを強引に作り出しても意味がない
僕が声を大にして言いたいのは「複合アスペクトの【ある・なし】は、解釈上はあまり大事ではない」ということです。
複合アスペクトがある = すごい、特殊?
という誤解があるような気がします。
必殺技みたいな名前や、錬成陣みたいな見た目がカッコいいからですかね。厨二心をときめかせるのは、とても共感できます。
複合アスペクトがない = 平凡、個性がない?
というわけではありません。
複合アスペクトがない偉人や有名人は大量にいますし、複合アスペクトがある普通の一般人の親戚もいます。
たった1つの超正確なアスペクトが、その人の際立った個性の決め手になっている場合もあります。そういうものを見落とさずに、きちんと解釈することの方がずっと大事だと思います。
それはマイナーアスペクトである場合もあります。マイナーアスペクト同士の複合アスペクト(みたいなもの。名前があるのかは分かりません)も稀に見かけます。それは別の機会に紹介します。
複合アスペクトの読み方
複合アスペクトの中に含まれている個人天体を見る
複合アスペクトの中に、どんな種類の天体が含まれているのかをチェックしてください。特に大事なのは個人天体です。サインやハウスも関係しますが、まずは天体の種類です。
「私はグラトラ(グランドトライン)持ちです」とだけ言われても、情報が足りなすぎて、その段階では僕は何も具体的な説明ができません。
アスペクトの原則(僕が自分の講座でそう説明しているだけなのですが)として、以下のようなものがあります。
ねこでもわかる「アスペクトの原則」
- 遅い天体は、アスペクトしている速い天体に影響を与える。
- 遅い天体は、アスペクトしている速い天体に補足説明を加える引き出しの1つとして機能する。
- 遅い天体の公転周期が長い(速度が遅い)ほど、アスペクトしている速い天体に与える影響力は深くて強くなる。供給されるエネルギー量も大きくなる。
これを応用させて「複合アスペクト全体が、どれかの(個人)天体に対する補足説明として機能している」と考えます。
複合アスペクトの中に含まれている天体が
- 太陽ならば、人生目的やライフワーク、公的な発展力など
- 月ならば、プライベートや自然体の自分、生まれ持った資質など
- 水星ならば、知的活動、考え方や言葉の表現力、技術、実務能力など
- 金星ならば、感性、センス、趣味や楽しみ、対人関係、男性の場合は好みの女性像など
- 火星ならば、戦闘力、チャレンジ、燃えて集中する箇所、女性の場合は好みの男性像など
に関する補足説明として、複合アスペクトが機能していると考えます。
「複合アスペクトの中に、複数の個人天体が含まれている場合はどう考えますか?」と質問されそうですが、その場合は、「太陽なのか」「月なのか」をまず考えます。
土のグランドトラインの例(竹内)
実例です。
以下は僕の出生図です。
グランドトラインがあります。
牡牛座の月
乙女座の火星・木星
山羊座の金星
という組み合わせのグランドトラインです。
この中で核として考えるのは月です。月の説明としてのみ、このグランドトラインは機能します。
つまり、プライベートの自然体の過ごし方や振る舞いとして、グランドトラインの特徴が出てきます。全て土のエレメントで構成されているので、それが安定供給されます。感性を活かす、モノ作り、実務的なこと、快適な生活環境が維持されます。
同時にデメリット面もあります。グランドトラインは各エレメントの「いつもの調子」を崩したくありません。崩されることを防ぎ、崩れてもすぐに元通りに修復しようとします。変化を嫌がります。
#共感してもらえない事
— 竹内俊二@ねこちゃんと占星術 (@soranoiro333) September 13, 2019
グランドトラインのネガティブな側面
僕は月♉、火星・木星♍、金星♑の土の三角があります。私生活において自己完結的です。自分の快適を人に邪魔させない。求める快適は自分にしか作れないので、善意で助けてもらったのに生態系を乱されたように感じ、後で自分で修復してる
複合アスペクトを1つづつ分解して考えてみる
次に、グランドトラインを分解して考えてみます。
月に対してどの天体がアスペクトを作っているのかを1つづつ普通に読みます。
- 月に対して金星がトライン →
月と金星のセットは、私生活と趣味的な楽しみの対比です。金星は常に月に迷惑をかけず、ほどほどの安全な範囲内で楽しみを見出します。
9ハウス、山羊座の金星なので、実用的な勉強が趣味です。それが月の癒やしとリフレッシュになりますが、トラインなので、金銭的な負荷をかけない範囲にとどめます。 - 月に対して火星・木星がトライン →
火星と木星のセットは、火に油を注ぐみたいな組み合わせで、ノリのいい火星です。そのセットが月を助けます。月の快適なテリトリーを乱されたり、侵害されたりした時に、火星は急ピッチで復旧作業をします。例えば、出張から帰ったらすぐに片付けて、一刻も早く通常モードに戻そうとします。木星があるので、火星に棘がなく温和です。
6ハウス、乙女座の火星なので、テキパキ家事をしたり、資料作成の細かいこだわりに発揮されていると思います。木星があるので、持ち上げられるとついノッてしまう火星です。
さらに、補足的に金星を読んでいくと、
- 金星に対して、火星・木星がトライン →
9ハウスの金星を講座や勉強会だとすると、そこに対する下準備です。木星があるので、資料作成は「ねんのため」と言って、いつも毎回修正してしまいます。永遠に完成しなさそうです。
分解して読むと、グランドトラインの中身がより詳しくわかってきます。そして、「グランドトライン」という大枠の解釈だけでは、この中身も何も語れないということを、分かっていただけたでしょうか。
他の天体との対比を考えてみる
「このチャートはグランドトラインが目立ってますね〜!」で、説明が終わってしまってはいけません。
繰り返しになりますが、このチャートにおけるグランドトラインは月に対する説明であり、太陽に対する説明ではありません。
太陽は射手座にあり、このグランドトラインの一角の火星・木星に対してスクエアです。太陽としては、このグランドトラインの安全に閉じこもろうとする性質を、後ろめたく、否定的に見ています。
掃除も料理も嫌いではないし、それなり小綺麗に楽しく低コスパで、安全にのほほんと暮らしていく。それだけでは「人生が停滞してしまう!」「ハングリー精神が足りない!」と、射手座の太陽は訴えます。6ハウスで準備したものは、実践しなければ意味がありません。
お客様と対面する臨場感あふれる場面(射手座・8ハウス)に立ち会い、人間ドラマや生きる意味について考え、精神的な成長を共有することに、この太陽は喜びを感じます。
もし、月と太陽が逆の位置にあったとしたら(配置的にはあり得ないですが)、太陽がグランドトラインを引き連れて機能するので、職業はがっつりとクリエイティブ系です。自動車の3DのCADの仕事をしていた事がありましたが、それがライフワークになったかもしれません。
複合アスペクトに含まれる天体の速度を見る
同じ種類の複合アスペクトでも、天体の種類が違うとまるで意味が変わってきます。
前述の「アスペクトの原則」の3番目を見てください。
ねこでもわかる「アスペクトの原則」
- 遅い天体は、アスペクトしている速い天体に影響を与える。
- 遅い天体は、アスペクトしている速い天体に補足説明を加える引き出しの1つとして機能する。
- 遅い天体の公転周期が長い(速度が遅い)ほど、アスペクトしている速い天体に与える影響力は深くて強くなる。供給されるエネルギー量も大きくなる。
これはアスペクト全般に言えることですが、当然、複合アスペクトに関しても言えることです。
速い天体で構成された複合アスペクトは、天体の種類にもよりますが、比較的身近で日常的な範囲での作用になります。
それに対して、トランスサタニアンが含まれた複合アスペクトは、それぞれの天体の意味においての深みが出てきます。スケール感が壮大になり、より個性的な特徴が出てきます。
風のグランドトラインの例(アガサ・クリスティー)
実例を見てみましょう。
冒頭に載せたアガサ・クリスティーです。
天秤座の月
水瓶座の木星
双子座の海王星・冥王星
これらが連合しているグランドトラインです。
この中に含まれている個人天体は月です。つまり「このグランドトラインは、月に対する補足説明として機能している」と考えます。
エレメントは全て風なので、幅広い豊富な知識や、優れた理解力、客観性です。
天秤座の月は9ハウスにあります。
これは小説の中の細かな人物描写に現れていると思います。
このグランドトラインにおいて極めて特徴的な要素は、海王星・冥王星の合が含まれている点です。
海王星・冥王星の合は霊的・神秘主義的なアスペクトです。どちらも非常に公転周期が遅いため、歴史上、滅多にこのアスペクトは出来上がりません。直近では1887年〜1895年あたりです。多くの優れた芸術家や宗教家、神秘思想の研究者などが生まれた世代です。大日本帝国が誕生したのもこの時代です。
海王星・冥王星の合は完全に世代的なアスペクトなのですが、そこに個人天体がアスペクトを作っている人は、海王星・冥王星の影響が個人天体に向かって降りてくるので、その世代を代表する一人になります。アガサ・クリスティは、月の性質の中に、海王星・冥王星が降りてきています。
月は幼少期や、幼少期に受け取った母親からの印象なども表します。Wikipediaを見ると以下のような記述があります。
母クララは父の従妹で、少々変わった価値観を持つ「変わり者」として知られていた。母の特異な性格はアガサや家族の運命に少なからぬ影響を与えたが、フレデリックは奔放な妻を生涯愛し続け、アガサも母を尊敬し続けた。
少女時代のアガサは兄や姉のように正規の学校で学ぶことを禁じられ、母親によって直接教育を受けた。母クララの教育に対する不思議な信念は大きな影響を幼いアガサに与えた。例えばクララは「7歳になるまでは字が書けない方が良い」となぜか信じており、アガサに字を教えなかった。それによりアガサは一般の子供より識字が遅く、父がこっそり手紙を書く手伝いをさせるまで満足に文字を書けなかった。変則的な教育は、字を覚えた後も独特の癖をアガサに残してしまい、現存している子供時代の手紙はスペルミスが非常に多い。
同年代の子供がパブリックスクールで教育を受ける間、アガサは学校に入ることを許されなかった。同年代の友人のいないアガサは使用人やメイドと遊んだり、家の庭園で空想上の友人との一人遊びをしたりして過ごし、内気な少女に育っていった。一方で、父の書斎で様々な書籍を読みふけって過ごし、様々な事象に対する幅広い知識を得て、教養を深めることが出来た。また、事情から一家が短期間フランスに移住した時、礼儀作法を教える私学校に入って演劇や音楽を学んだ。結局、母は最後まで正規の教育を学ぶことは許さなかったが、アガサ自身は自らが受けた教育について誇りを持っていたという。
Wikipediaより引用
母クララからの教育が、6ハウスの双子座の海王星・冥王星を象徴しているように思います。6ハウスは練習や訓練、しつけなどを表すので、かなり特殊なしつけです。母の変則的な教育は、表面的な理解力ではなく、この世代的な配置特有の特異な想像力をもたらしたと言えます。「7歳になるまでは」という年齢が、偶然にも月の年齢域と合致しています。「空想上の友人との一人遊び」も海王星・冥王星的です。
父の書斎で様々な書籍を読みふけったのは、9ハウスの月(書斎、教養)と、2ハウスの水瓶座の木星(幅広い知識)のトラインに見えます。
このグランドトラインは、月に対する補足説明なので、大人になってからもごく自然発揮される資質や、私生活の特徴を示すものです。幼少期の「空想上の一人遊び」が、推理小説に変わったのかもしれません。
それを小説として書いて形あるものにまとめていくのは、9ハウスの乙女座の太陽です。また、それは主人公の名探偵、エルキュール・ポアロのキャラクター像にそのまま重なります。
ASCに重なる射手座の火星と太陽がスクエアです。ポアロは悠々自適に引退して暮らしたい(月を含むグランドトライン)が、難事件・怪事件が引退を許してくれない(乙女座の太陽と射手座の火星のスクエア)。
尋問や会話からの何気ない一言からヒントを得て、それを分析し、答えを導く。それも射手座と乙女座のスクエアです。
だんだん細部の話にハマってしまいましたが、同じグランドトラインでも、遅い天体が含まれると意味に深みが出てくる違いは、お分かりいただけたでしょうか。大事なのは、複合アスペクトを構成している天体をきちんと見ることです。
次のブログはトランジットの続きを書きます。
複合アスペクトについても、また思い出したように書くかもしれません。
今回のまとめ
- 複合アスペクトは、僕は基本的に10天体の組み合わせで見ています。
- 複合アスペクトに含まれている個人天体は何か。複合アスペクトは、その個人天体に対する補足説明として考えます。
- 複合アスペクトの【ある・なし】は、解釈上はあまり関係ないと僕は思います。それよりも、普通に1つづつ分解して読んだ情報の方が有益です。
お知らせ
グループ講座「ねこでもわかる占星術講座2」
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2日でねこでもわかる占星術講座 in大阪
10/16(水) 天体・サイン・ハウス編
10/17(木) アスペクト編
動画視聴による受講であれば、残席に関係なく受講できます。
6日でねこでもわかる占星術講座 in福岡
10月から福岡で出張占星術講座を行います。5時間15分 ✕ 合計6日間です。
1〜2回目は天体・サイン・ハウスの基礎編、3〜6回目はアスペクト編です。5〜6回目はその実践編で、レクチャーだけでなくワークシートを使ったアスペクトの作文練習を取り入れてみます。初の試みです。
10/26(土) 占星術の概要・サインと天体
10/27(日) ハウスと天体
11/23(土) アスペクトの基礎編1
11/24(日) アスペクトの基礎編2
12/14(土) アスペクトの実践編1
12/15(日) アスペクトの実践編2
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